春図鑑「卒業式」

昭和の時代の卒業式といえば、小学校の女子児童はたいてい涙を流し、「悪ガキ」と呼ばれているような男の子でさえも、じんわりと涙を浮かべていたりするものだった。さすがに中学生や高校生にもなれば生徒が卒業式で泣くようなことはなく、涙ぐんでいるのは教師のほうだったりする。卒業式で校歌のほかに歌われる曲といえば、「仰げば尊し」や「蛍の光」が代表だったはずだ。昨今の卒業式は、けっこうドライなもので、終始、笑顔で式典が進められる。歌われる曲にしても、すっかりスタンダードとなった合唱曲の「旅立ちの日に」は正統派で、レミオロメンの「3月9日」や、いきものがかりの「YELL」を歌う学校もある。なかにはEXILEの「道」が歌われる卒業式も少なくない。「贈る言葉」が歌われていたのも遠い昔話である。しかし、今も昔も変わらないのは母親たちの涙。もちろん涙の理由は卒業式という特別な日の感動だけではなく、これまで育てあげてきた日々を思い起こし、感慨にひたってのことだろう。大学の卒業式ともなれば、もう親たちの出る幕もない。すでに成人しており、社会人としてスタートを切る直前である。大学にもよるが、卒業式が成人式と並んで、まるでファッションショーと思しき様相を呈することもある。とりわけ京都大学の卒業式では学生たちのパフォーマンスが見ものという不思議な式典となっている。いずれにしても、「おめでたい」ことには間違いない。
 

 

春便り 

 

 
 
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