九州の西海岸の情緒豊かな風景をゆっくりと走る
肥薩おれんじ鉄道(熊本県八代市~鹿児島県薩摩川内市)
九州の西海岸を軽快なエンジンの音を立てながら、車窓に広がる八代海を染める夕日、さらにみかん畑が彩る山々、風情が残る田舎道などに沿って走るディーゼルカー。九州新幹線の「つばめ」や「さくら」は新八代から川内までをトンネルを使ってわずか32分で駆け抜けぬけるが、肥薩おれんじ鉄道の普通列車は2時間半から3時間かけてゆっくり走る。それだけで、通勤で利用する電車とは趣を異にすることだろう。八代海といえば、旧暦の九月に不思議な光が見えることで知られている。「不知火」と呼ばれるもので、八代海が不知火海とも呼ばれるゆえんだ。「漁火が異常屈折したことによって見える現象」だが、そんな科学的な説明は、幻想的な世界を楽しむ人にとって余計なお世話だろう。車窓からは目の前に広がる八代海の向こうには天草の島影が見え、圧巻は、薩摩大川駅から西方駅までの区間で、波打ち際ギリギリのところを列車が走る。さわやかな潮風を受けて心が洗われるような旅になるはずだ。海岸の風景にしても、砂浜あり、岩礁あ
りと、バリエーションに富んだもの。大自然がつくりだした景観の偉大さに、旅人は、ただただ畏敬するしかない。2013年から観光列車として運行されている「おれんじ食堂」は、特別仕様の2両編成のディーゼルカーで、金曜と週末、春休み、夏休みなどの行楽シーズンを中心に運転し、別名「九州西海岸観光列車」と銘打ち車窓風景とともに熊本県・鹿児島県の食材を使った料理を楽しめる「動くレストラン」。鉄道ファンならずとも、グルメにとっては垂涎の列車といえるかもしれない。
●見頃期間:通年
●路線区間:八代駅(熊本県)~川内駅(鹿児島県) 116.9キロ
●駅数:28駅
●HP:肥薩おれんじ鉄道
●問い合わせ先:肥薩おれんじ鉄道株式会社営業部 0996-63-6860
●乗車料金:大人2620円、小人=1310円(八代駅~川内駅/平成27年7月現在)
●アクセス:八代駅へはJR鹿児島本線・八代駅と共同使用駅となっている。九州新幹線利用の場合は、新八代駅で鹿児島本線に乗り換えて八代駅へ