秋の風景「焚き火(たきび)」
昔は冬の風物詩でもあった焚き火。暖をとるだけでなく、その焚き火のなかに、さつまいもなどをしのばせておき、火が消えるころには美味しい焼き芋のできあがり……といった時代があった。焚き火をしているところを通りかかれば、「どうも……」などと言いながら温めさせてもらったり、世間話をしたりすることも珍しくなかった。神社やお寺などでも、落ち葉を集めて焚き火をしていたところもいくつもあったし、かつては、家庭で燃えるものを集めて処分するための焚き火も多くあった。また建築現場などでは、焚き火を囲みながら暖をとる作業員の姿もあった。だが、住宅密集地にかぎらず、昨今は焚き火が制限されているところが数多くあり、家庭で行う落ち葉炊き、焚き火も法律で禁止されている所もある。童謡・唱歌の「たきび」の歌詞のようなシーンには、なかなかお目にかかれない時代である。そもそも、「垣根の垣根の曲がり角」の「垣根」がなく、鉄製のフェンスだったり、コンクリートの壁だったりするわけで、焚き火を楽しむ場所もない。郷愁にひたりながら、火にあたるチャンスがないのは残念なこと、このうえない。
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