秋の風景「鰯雲(いわしぐも)」
空を見上げれば、その季節ならではの雲がある。たとえば夏なら入道雲、秋なら鰯雲がその代表だろう。澄み渡った秋空に、鰯の群れがあらわれたかのような鰯雲。魚のウロコのようなにも見えることから「鱗雲」と呼ばれることもある。空を見上げることが少なくなったという人には、ぜひごらんいただきたい美しい光景だ。科学的には「巻積雲と呼ばれ、入道雲よりも低い空に浮かぶ雲」だが、人の目で見ても空の高さはわかりにくいので、科学的な話は無粋かもしれない。昨今、「季節感が失われつつある」といわれる。たしかに、野菜にしても果物にしても、農業技術や保存技術、あるいは流通システムの発達で、旬の時期だけではなく、ほぼ一年中食べられるようになった。エアコンの普及で、暑さ寒さもしのぎやすくなった。だが、空の雲にまで人知はおよばないようで、せいぜい「鰯雲が出たら、鰯は大漁」といった程度でしかない。ただ、鰯雲は天候が悪化する前兆といわれている。たとえば台風の前に現われることも少なくないので、鰯雲の鑑賞をひととき楽しんだら、防災の準備を怠りなく。
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