秋の風景「秋の七草 

 

 秋の七草とは、女郎花(おみなえし)、尾花(おばな/「ススキ」のこと)、桔梗(ききょう)、撫子(なでしこ)藤袴(ふじばかま)、葛(くず)、萩(はぎ)の七種類の植物を呼んだもの。それぞれに秋の装いを感じさせる花で、かつては日本各地の野に咲いていた。自然が消えてしまった街でも、近くの植物園などで目にすることができるはずだ。春の七草は「七草粥」にして食べる風習があるが、秋の七草は愛でることに徹している。秋の七草のルーツは『万葉集』の山上憶良の二首の旋頭歌にあることをご存知だろうか。「秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」(万葉集・巻八 一五三七)と「萩の花 尾花 葛花 瞿麦(なでしこ)の花 姫部志(おみなえし) また藤袴 朝貌(あさがお)の花」(万葉集・巻八 一五三八)である。ただし、「朝貌の花」については、諸説あり、「朝顔」「槿(むくげ)」「昼顔」と解釈する向きもある。