夏図鑑「雷」
「地震、雷、火事、親父」といえば、かつて「怖れられたもの」の四天王。たしかに、東日本大震災や阪神大震災など、地震による大規模災害は、科学が発達した21世紀の現在でも起きている。雷は科学的にいってしまえば「雲と雲とのあいだ、あるいは雲と地上とのあいだで起こる放電によって光や音が発生する自然現象」だが、雷の放電量は数万アンペアから数十万アンペア、電圧は10億ボルトにもなる。これだけのエネルギーは現代人にとって脅威であることにかわりはない。古代の人は、雷は神が音を鳴らすものと考え「神、鳴り」と呼んで怖れた。その一方で、稲の花が咲くころに雷が頻繁に起こることから、稲は雷というパートナーがあってこそ実を結ぶと考えられ、これが「稲妻」の語源となっている。日本人は、自然の猛威をただ怖れるだけではなく、自然の恵みと合わせて考えたのである。ただし、火事はともかく、「親父」はいつのまにか、怖い存在ではなくなってしまったかもしれない。
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