冬図鑑「懐炉」
懐の炉と書いて「懐炉(かいろ)」。昨今は「振るだけで温かくなる使い捨てのカイロ」が主流のようだが、昭和の時代には、ベンジンなどの揮発油を使った文字どおりの懐炉があった。大正末期に発売された「ハクキンカイロ」が、その代表である。戦前・戦中は軍人や郵便配達員など限られた人たちにしか使わけていなかったが、その理由は燃料のベンジンが、稀少なものだったためだ。昭和の時代、多くの人が、こうした懐炉を愛用するようになる。冬になると、銀色をした、角が丸い物体にベンジンを詰め、点火して、それを黒いネルのケースに入れて出かけていくお父さんの姿を見たことがある人もいるはずだ。オイルライターでおなじみのZippoは「ハンディウォーマー」という懐炉を製造、販売している。燃料はもちろんオイルだ。たしかに、使い捨てのカイロは手軽で便利だが、昔懐かしいハクキンカイロには、その漂う香りからしても、独特なぬくもりがあったような気がする。
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