冬図鑑「鏡餅」
お正月にはつきものの鏡餅は、その形から名づけられたもの。いま「鏡」といえば、四角いものも、丸いものもあるが、ときには三角のものもある。だが、平安時代の鏡は青銅製の丸いもので、しかも、おしゃれのために使われていたわけではなかった。八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)、天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)とともに、八咫鏡(やたのかがみ)が三種の神器とされていたことからわかるように、日本人は鏡を神聖なものと考えていたのである。その鏡のかたちに由来する鏡餅も、当然、神仏へのお供えものである。丸くて平たい大小ふたつの餅を三方の上に重ねておき、橙、伊勢海老、串柿などを添える。もっとも、子どもからすると、家の中に雪だるまがあるようで、さわったりいじったりしたくなるもので、イタズラしては親から叱られたという経験をおもちの方がいるかもしれない。一説には、不老不死の霊薬がある中国の蓬莱山のかたちに似せて、長寿を祝うための餅といわれている。一般に普及したのは室町時代といわれていて、その理由は「家の中に床の間ができて飾れるようになった」ため。たとえば、いまどきの部屋には「床の間」がないため、スーパーなどでパック詰めされた「鏡餅」を買ってきたものの、置く場所に困り、テレビのとなりに置いている……という人も少なくないかもしれない。さて、飾り方だが飾る場所は神仏に捧げる鏡餅を飾る場所として考え、床の間が最もふさわしいが、無い場合は玄関から遠い、奥まった位置にするのがふさわしい。鏡餅を飾り始めるのは、早くても良く12月28日が最適とされる事が多く、12月31日に飾るのは「誠意に欠ける」、「葬儀の飾り方を連想する」などの理由により「一夜飾り」、「一夜餅」として忌避される。また、正月が終わって下げた餅は「鏡開き」を行い、餅を食することになる。鏡は円満を、開くは末広がりを意味し、また刃物で切るのは切腹を連想させるので手や木鎚で餅を食べやすい大きさに分ける。正月をすぎた鏡餅は乾燥しひび割れているため、主に汁粉や雑煮などにして食するのがいいという。
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